2008年4月21日月曜日

春の三ヵ所

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朝、お遍路の服を着て、杖を手に、国分寺へ歩いて行った。お寺はまるで竹林のフレームにおさめられた絵のようだった。本堂の前でおじきし、頭を上げると朝の薄墨色の雲がすっかり消えていた。国分寺から出て、五色台に向かう前、地元の方からお茶やお菓子などのお接待を受けた。
国分寺 出発前の 蓬もち

暖かい太陽の下、五色台の急な斜面を登るにつれて、たくさん汗が出てきた。山の葉っぱの新緑が鮮やかに輝いていた。平坦でぬかるんだ道を、私たちは一心に進んで行った。水溜りを踏み越え、木の枝を貫く光を浴びながら歩を進めた。

散っている 赤い椿や 潦

白峯寺に到着した頃には、足がとても疲れていたが、本党までの階段を一気に上った。白地に赤い縞が入った椿の花が見えた。軒の陰は涼しかった。


白峯寺 香の煙や 遍路傘

おむすびを食べ、少し休憩すると、また元気が出てきた。遍路仲間と楽しく話しながら足場の悪い道をまたいで歩いた。下り道が曲がっているところで、密集した林が急に広くなっていた。木の下で風に吹かれている草の緑と黄色が混ざり、柔らかく見えた。山道をまた上り、山襞の木々を眺めた。

山桜 白峯寺から 根香寺へ

根香寺の門を入って階段を下り、杉に覆われた涼しい道を本堂まで歩いた。階段の上で、お坊さんから青峰の千手観音と牛鬼の戦いについての伝説の話を聞いた。観音の手は牛鬼の角に勝ち、山の住人は助かった。今でもその角が残されているそうだ。本堂までの廊下では3千体の小さな仏像が6千の耳で人々の祈りを聞いている。

牛鬼の 落とした角や 青峰寺

かばんを担ぎ、杖をしっかり握りしめ、お寺を出た。遍路道を下りる途中、丸い山々の間から高松の港が小さく見えた。溜め池の長い草の中、青鷺が一本足でただずんでいた。太陽はだんだん山へと近づいていた。

下る時 鳶飛び出し 日の暮るる

(2008年4月20日)